どうすれば愛し合えるか?…これは僕の一生涯のテーマと言っても良いかもしれない。愛し合ってるかい?ってライブの時に、心の底から言ってみたい。だってそうじゃんか。愛し合ってるかい?ってことな訳じゃんか。それ以上でもそれ以下でもない。人生で大切なことは、そんなに多くない。
北海道を旅した。車を借りて。2週間ほど。台所ライブを2回もやらせてもらった。白土さんにセッションもしてもらった。あさひの杜で一回、廣田家で一回。どちらでも僕のことを最大限に盛り立ててくれて、とても気持ちよくライブさせてもらえた。
これはとんでもないギフトだった。僕は本当に得難い機会をつくってもらっていたのだ。だからこそ、自分の無力感みたいなものも、強烈に感じた。そのチャンスを、とても生かしきれたとは言えないライブだったと思う。僕は自分の力を過信していた。歌いたいことがあいまいだった。やるべきことが見えていなかった。ボーナスタイムを、生かすことができていなかった。
特に北海道ラストの廣田家では、これでもかというくらいに現実を突きつけられた。否、つきつけてもらっていた。それは廣田家の、まさしさんの本当の優しさだ。本当のことを言ってくれた。自分の存在をかけて。本当に僕に必要なことを教えてくれた。あまりにも無礼で、どうしようもない僕ができる、せめてもの恩返しは、その教えをきっちりと生かしきること。あの北海道での旅がなければ僕はあらえびすに行かなかったかもしれない。歌で食っていくということをとっくに諦めていたかもしれない。それどころか深い闇に沈み込んで、病気になり、そこから出てくることができなくなっていたかもしれない。
本当にたくさんの人に助けられて北海道の旅を無事に終えることができたと思う。自分のおごりも痛い程味わった。どうしようもなく、どうしようもない自分に、これでもかというくらいに出会った。そんな僕にでも色々なチャンスをくれる人達の温かさに触れて、僕は心の底から救われた。嬉しい気持ちになった。生きていて良かったと思った。
ファニという男の子を肩車して眺めた星空を今も忘れることができない。お父さんになりたい、生まれてはじめて、心の底から、なぜかそう思ったのを今でも覚えている。それくらい、何だかロマンチックな夜だった。ふるふると心のふるえる、忘れ難い夜だったんだ。
初めてあらえびすの本部のある山形に行った時もそうだった。夜、美味しいごはんをいただいた後で、物語と歌を歌ったあの時間。全てがこの日この瞬間のためにあったのではないかと思うような時間、空間の中で、僕は幸せの絶頂にいた。生きてて良かった、歌ってきて良かった、そう心の底から思った夜だった。
時は流れて川に流れて
辿り着くのはここになるでしょう
2023年9月15日