空と土を繋ぐものは何だろう。その、あいだにあるもの。男と女を繋ぐものはなんだろう。その、あいだにあるもの。過去と未来を繋ぐものはなんだろう。その、あいだにあるもの。

 その、あいだにあるものから土がうまれ、それから空がうまれたような気がする。その、あいだにあるものから女がうまれ、それから男が生まれたような気がする。その、あいだにあるものから未来がうまれ、それから過去がうまれたような気がする。

 僕の身体の中の話で言えば、それは心臓になる気がする。脳と腸のコミュニケーションを円滑に進めるために欠くことのできない存在。血の流れを生み出し、循環させる。

 地球の中の話で言えばそれは雲になる気がする。空と土のコミュニケーションを円滑に進めるために欠くことのできない存在。水の流れを生み出し、循環させる。

 人間の中の話で言えばそれは恋になる気がする。男と女のコミュニケーションを円滑に進めるために欠くことのできない存在。心の流れを生み出し、循環させる。

 歴史の中の話で言えばそれは”今この瞬間”になる気がする。過去と未来のコミュニケーションを円滑に進めるために欠くことのできない存在。時の流れを生み出し、循環させる。

 音楽をやる時なんかまさにそうだ。僕は自分の心臓の刻むリズム、その脈動を中心にして、演奏し、歌を歌う。心臓をコントロールできるわけではない。でも、心臓の働きを妨げようとする動きをとりのぞくことならできる。それは例えば、力むこと、カッとなって頭に血がのぼること、恐怖や怒り、憎しみにとらわれそうになること。

 それは人によってもさまざまだろうから、とにかく僕の心臓にとっての負担になるもの、その働きを抑制するものを、とにかく失くしていく。それは社会的には働いていないような姿を見せるが、生物的には、心臓的には、どんどん働く方へと向かっているのである。

 働くというのは本来、心臓のように自律的なものだと思う。だから僕にできるのは、その自律的な働きに対して、どう働きかけられるのかということ。もうすでに働いてくれているものにたいして、いかにそれを邪魔しないでいられるか。むしろその働きを高めていけるのかというのが、僕にとっての仕事である。仕える事だ。僕は僕自身に仕えている。

 だけどそもそも僕自身っていったい何なのだろう。この、心臓の脈動。僕にはコントロールすることのできない存在。いつはじまり、いつ終わるのかも分からない存在。流れを生み出し、会話を生み出し、そして僕という存在をも生み出すこの何か。僕は僕の中に、とんでもない神秘を抱えている。謎を抱えている。分からないことがあまりにもたくさんある。

 それはまるで果てしない宇宙のように広がっていく。分かることが増えるほど、分からないことが増えていく。僕は僕の中にあるその闇の深さにこわくなる。まるで宇宙に一人、ぽんと放り出されたような気持ちになる。自分のあまりのちっぽけさに、息がつまりそうになる。本当に生きているのか分からなくなる時がある。

 だから、僕は歌う。生きているんだということを確かめるために。僕は僕なんだということを確かめるために。

 そして、そんな時にこそ感じることのできる、恐るほどの、ひれふすような何かに触れて、それによって僕は生かされている、僕は僕であることができているということを確かめるために。

 

Follow me!

カテゴリー: 晴太郎の窓愚痴